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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

ブルービーの思い出

平田明美

 

 今は殆どの楽しい記憶が曖昧なままだ。ふと思い出したのは、ある日、南阿蘇の丘の上の美術館に、息子を連れて行ったことだ。そこは「幸せを呼ぶ」というブルービーに会える場所だった。
 ブルービーとは、黒い胴体に鮮やかな青い縞模様を纏った体調15ミリ以下の小さなハチで、和名をルリモンハナバチという。日本では7都道府県でしか確認されておらず、絶滅危惧種に指定されている。比較的暖かい時期にその珍しい姿を見ることができ、見られた人はとてもラッキーで、幸せな気分になるという。
 さて、ブルービーを見られるだろうか?息子は大好きなお母さんとのドライブが大好きだし、外出先で美味しい物を食べたり、きれいな景色を見るのも大好きだから、車に乗る時はいつもはしゃいでいた。
 標高の高い所まで運転して辿り着いたその美術館は、とても可愛い外観で、中には沢山のブルービーの絵本が展示されていた。色とりどりの本の挿絵は温かみがあり、どれも笑顔のブルービーが主人公だ。一巡りした後、私たちはまるでモネの絵画のような庭に出た。風のある日、可憐な草花が揺れて歓迎してくれているようだった。でも残念なことに、季節がらあいにくブルービーを見ることはできなかった。幸せを逃したのだろうか・・?
 その美しい景色を堪能した後、私たちは併設されたカフェに入り、ハチミツがたっぷり入ったハーブティーを飲んだ。息子は車いすに座っていて、喋ることもできなかったが、楽しい時は満面の笑みで表現できた。辛いことも多かったけど、甘くて濃厚な時間も確かにあったのだ。
 あれから数年がたった。今息子は、あの時のようなきれいなお花畑にいるのだろうか?体が小さく少ししか食べられなかった息子でも、食いしん坊だったから、必ずお料理を分けてお供えしている。体も弱かったけど、ずっと元気でいて欲しかったから、食べ物が上手く入らなくなった時は、ハチミツを舐めさせていたのだった。ちょど思い出したから、これからは好きだったパンにバターとハチミツをたっぷり塗って「どうぞ」と笑顔の写真の前に供えることにしよう。

 

(完)

 

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